AUXOUT氏は東京を拠点に活動する日本のコンテンツクリエイター。YouTubeで「Cinematic Vlog」をテーマに作品を作り続け、写真・映像制作に関する解説動画は国内外の映像製作者から注目を集めており、累計再生回数は3,000万回を超える。企業のブランディング、PR映像を制作する他、オリジナルのLUTは170カ国以上で販売されている。
ProResフォーマットで撮影をしていることから、HDDの容量不足は日常茶飯事で、何台もの外付けHDDを購入し続ける必要があった。台数が増えるにつれ管理は煩雑になっていき、過去のプロジェクトで撮影した映像を利用する際には、何台ものHDDを繋ぎ直しデータを探す必要があった。誤ってデータをロストしてしまった事をきっかけにNASへの移行を決意する。鈴木心写真館における撮影は東京の自社スタジオだけでなく全国へ出張することも少なくありません。カメラマンは鈴木氏のほかにも複数人在籍し、各自が撮影後オリジナルデータ(RAW形式ファイル)を外付けHDDにバックアップしていました。データ容量や帯域の問題からクラウドに頼ることは現実的ではなく、累計ドライブ数は数十台に及び、オフィスの隅に保管したドライブの管理に頭を悩ませていました。お客様の中には数ヶ月後にデータを追加購入される方もいるため、依頼を受けた際に複数の外付けドライブをパソコンに抜き差しし目的のファイルを探すのも骨の折れる作業となっていました。
容量、管理のしやすさ、システムの安定性などを考慮し、NASの世界的ブランドQNAPを導入した。最初は4ベイモデルのNASを数年愛用し、現在ではハイエンドNASモデルTVS-h1288Xへとアップグレードした。導入にあたって重視したのは、複数人での同時接続・編集能力や、8K動画制作に耐えうる高いIOPS。TVS-h1288Xに搭載されたIntel® Xeon® WプロセッサはエンタープライズクラスのCPUなので、AUXOUT氏の求める高い要件を満たしていた。
ストレージには16TBのHDDを8台、1TBのSATA SSDを4台装着。大量のアーカイブは大容量のHDDボリューム(理論値で112TB)へ、SSDはキャッシュとして利用しIOPSのパフォーマンスをより向上させることで、作業効率とコスト面のいいとこ取りを実現している。HDDボリュームは8台のドライブでRAID5で構築しているため、データの読み書きが分散されることにより、読みこみは900MB/s、書きこみは700MB/s越えと、外付けSSDに匹敵する速度を誇る。
NASは作業部屋の隣のウォークインクローゼットに設置し、10GbEハブを介してMac Studioに接続、もしくはWi-Fi経由でMac BookやiPhone からもアクセス可能。映像はNASにキャプチャーボードを介して直接記録しているため、マイクがHDDの動作音を拾わないので快適だ。
DaVinci Resolveを愛用するAUXOUT氏は、NAS上にデータベースを構築している。必要な作業はQNAPの無料アプリContainer Stationをインストールし仮想サーバーを建ていくつかの設定を行うだけ。Blackmagic純正のストレージ に比べて1.5倍大きな容量をたった5分の1の価格で実現し、複数人での作業環境をあっという間に構築してしまった。
データを守るためのバックアップも忘れていない。ファイルのバックアップと同期が行えるHybrid Backup Sync (HBS 3) アプリをNASにインストールし、データを用途別に複数のクラウド環境に保存。同期機能によりリモートで作業するメンバーとのデータの受け渡しにも非常に便利だ。またデータ損失そのものからファイルを守る手段としてスナップショットも設定している。スナップショットがあれば、うっかりミスでファイルを消してしまった場合にも過去のファイルの状態に戻れ、データを復元できる。
優秀なハードウェアとソフトウェアによる作業効率の大幅な向上はもとより、将来万が一NASが壊れた場合でも、QNAP製NASへの引っ越しであれば、新しいNASに換装すればいいだけであることも心強い。QNAPのNASがもたらす「データを失わない安心感」はAUXOUT氏のワークフローをより堅牢なものにしている。