鈴木心氏は日本の写真家です。キャリアは20年以上に及び、これまで「サントリー 角ハイボール」や「JR SKI SKI」、「大河ドラマ 平清盛」など日本を代表するコンテンツの撮影に携わってきました。2011年に鈴木心写真館を創業、これまで撮影に関わったのは46,000名以上に及びます。広告以外にも家族写真やビジネス用ポートレートまで幅広く撮り続け、一貫して「撮ってたのしい、見てたのしい、見せてたのしい、今までにない写真体験」を提供することを目指しています。
鈴木心写真館における撮影は東京の自社スタジオだけでなく全国へ出張することも少なくありません。カメラマンは鈴木氏のほかにも複数人在籍し、各自が撮影後オリジナルデータ(RAW形式ファイル)を外付けHDDにバックアップしていました。データ容量や帯域の問題からクラウドに頼ることは現実的ではなく、累計ドライブ数は数十台に及び、オフィスの隅に保管したドライブの管理に頭を悩ませていました。お客様の中には数ヶ月後にデータを追加購入される方もいるため、依頼を受けた際に複数の外付けドライブをパソコンに抜き差しし目的のファイルを探すのも骨の折れる作業となっていました。
鈴木氏が新しいストレージに求める性能は主に二点ありました。一つはお客様のデータをしっかりと守る仕組みが備わっていること。もう一つはカメラマンが撮影に集中できる環境をつくるため、データ管理に関する煩わしさを取り除いてくれること。
そこでソリューションとしてQNAPのAI NAS TS-AI642を導入してみました。TS-AI642は中小企業向けNASに求められる性能をしっかり備えた上で、機械学習ベースのAI処理スピードを向上するNPUを搭載したSoC(System-on-a-Chip)を採用する特別なモデルです。
QNAP NASはユーザーの要求に応じて専用アプリをいつでも自由にインストールできるのが特徴で、鈴木心写真館ではAI写真管理アプリQuMagieとAI検索アプリQsirchを活用しています。
AI写真管理&検索
QuMagieは写真に写った人やモノをAIが判別しスマートアルバムに分類してくれるアプリ。同一人物をひとつのフォルダにまとめたり、「ウェディング」フォルダにウエディングドレスを纏った人を、「犬」フォルダには犬の写った写真をまとめたりします。この機能により、例えば毎年記念写真を撮影するリピーターの写真が探し出しやすくなります。
写真の検索にはQsirch全文検索アプリを活用します。Qsirchは写真に写ったモノや色味、カメラの種類、ロケーションなどのタグを使い目的のファイルを検索するアプリです。この機能は「ファイル名は覚えてないけど写っていたモノは覚えている」といった、人間ならではの思考をNASで行うようなもので、数年来のデータの海から目的のファイルを探し出すことができます。
ファイルの共有も右クリックで簡単にリンクを発行して行うことができ、わざわざクラウドにアップロードする必要もありません。
複数デバイス同時アクセス機能
NAS導入後データへのアクセスはネットワークを介して行えるようになり、Windows、Macを問わずデスクトップからスムーズに接続できるようになりました。出先ではQfile Proスマホアプリを使います。myQNAPcloud経由でNASへ接続するため不正アクセスの心配もありません。鈴木氏は写真館のワークフローにNASを加えることを「空間や時間の制約を受けないのが最大の魅力」だといいます。
お客様の大切なデータを守る仕組み
鈴木心写真館は高いレベルでお客様のデータを保護する必要があるため、冗長性の高いRAID6を設定しました。これまでの外付けドライブを中心としたデータ管理法ではドライブ故障からデータを守れないという潜在的なリスクがありましたが、RAIDによりこの問題を解決しました。加えて天災や誤操作などからデータを守るためにHybrid Backup Syncを使い外部のストレージサービスに自動コピーを設定しています。
本来、鈴木氏がNASに期待していた性能はRAIDと複数デバイスでの同時アクセス機能といった基本的なものでしたが、QNAP NASの本格導入後、その利用価値の高さを実感したといいます。その後、容量を拡大するために8ベイJBODエンクロージャーTL-D800Sを導入し、ストレージ全体の容量を100TB超へとレベルアップ。これまでの写真データの大部分を移行させました。